経路積分の紹介

1. はじめに

こんにちは.物理学科3年生のミヤネといいます.12/16のアドカレを担当します.

今回は,場の量子論の発展の立役者である「経路積分」を中心とした話題を紹介しようと思います.まずは経路積分を定義して,それの応用としてスカラー場の量子化を見ていきます.その後,少し話題はそれますが,Feynmanの論文を参考にしてShrödinger方程式の導出を紹介したいと思います.

4章と5章の内容が書きたかったので,時間を見つけて少しずつ書きあげていたところ,すごい分量になってしまいました.物理をやったことがない方にも向けて,どの話題もself-containedに仕上げたつもりですが,量が多すぎて逆に読みづらくしてしまっているかもしれません1

この記事を書くにあたってよく参考にした文献には,私なりのReviewを書いてみました.全部読めているわけでもないですし,ちゃんと理解できてるわけでもないですが,もしよかったらそこも目を通していただければと思います2

本文を書き終わってから注意書きしていないことに気がついたのですが,第3,4章は自然単位系c=\hbar=1で書いてます.そういえば,素粒子論の先生の講演のアーカイブYoutubeで聞いていたところ,最初のほうのスライドで「1=2=-1=\piかも?」みたいな感じの注意があったのを思い出しました.どうやら,その方面の研究者はあまり係数を気にしないということを言いたかったらしいです3

2. 予備知識

本稿を読むためには,量子力学の知識が少し必要ですので,ここではその確認を簡単にしておきたいと思います.また,必須ではないですが,解析力学的な背景を知っているとより楽しめると思いますので,最小作用の原理についても少し触れておきたいと思います4

ブラ-ケット記法

「ブラ-ケット記法」という単語は,他の学科の皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?この記事はこの記法をよく使っているので簡単に紹介します.

量子力学では「状態\ket{a}のなかに状態\ket{b}を見つけ出す確率P」を

P\equiv |\braket{b|a}| ^ 2

というように定義してしまいます.このとき,\braket{b|a}を(確率)振幅といい,ある複素数値をとります.状態\ket{a}というのは考える系によって変わってきますが,基底を用いることが多いです.例えば,スピン2準位系では,ある軸に対して上向き\ket{\uparrow}か下向き\ket{\downarrow}かどうかを考えます.

また,今回よく使うことになるのが調和振動子の基底で,\ket{0},\ket{1},\cdots,\ket{n},\cdotsとなります.基底が有限ではないのは少し不思議ですが,これらは次の直交関係

\braket{n|m} = \delta _ {nm}

を満たしており,ちゃんと基底になっているといえます.

状態\ket{a}を別の状態\ket{a'}に移すような対応関係を考えます.これらはある1次変換\hat{A}で移すことができるので

\ket{a'} = \hat{A}\ket{a}

となり,この\hat{A}演算子(operator)といいます.基本的に,演算子は非可換であり

\hat{A}\hat{B}\ket{a}\neq\hat{B}\hat{A}\ket{a}

となっています.もちろん,可換な場合もあるので注意は必要です.

状態\ket{a}に対して演算子\hat{A}をうまくとってくると,

\hat{A}\ket{a}=A\ket{a} \ ,\ \ A\in\mathbb{C}

という関係が成り立つようにすることができます.このとき,\hat{A}演算子で,Aはある複素数値です.このA\hat{A}固有値といいます.ここまでは算術の話ですが,実は量子力学においてはこの固有値が観測する物理量となります.こういわれてもあまりピンとは来ないと思いますが,次の調和振動子の例を見れば少しは分かりやすくなるのではないでしょうか.

先ほど,調和振動子の基底は状態\ket{n}でかけると言いましたが,これは数演算子\hat{n}固有値nであるような状態であり,

\hat{n}\ket{n} = n\ket{n}

という関係が成り立っています.この系におけるハミルトニアン演算子

\hat{H} = \hbar\omega\left(\hat{n}+\frac{1}{2}\right)

とかけることがわかっており,この演算子固有値が系のエネルギーに対応します.例えば,真空状態\ket{0}のエネルギーE _ 0

\hat{H}\ket{0} = \frac{\hbar\omega}{2}\ket{0} \equiv E _ 0\ket{0}

となっているので,E _ 0=\hbar\omega/2です (零点エネルギー).同様の考察をすれば,粒子がn個の状態のエネルギーE _ n

E _ n = \hbar\omega\left(n+\frac{1}{2}\right)

となり,離散的なエネルギーの値をとることがわかります.固有値が実際の物理量(今回はエネルギー) に対応するということが,少しでも理解していただけたかなと思います.

完全性

完全性(completeness relation)というのは,基底\ket{a _ 1},\ket{a _ 2},\cdots,\ket{a _ n},\cdotsに対する条件

\sum _ {n=1} ^ {\infty}\ket{a _ n}\bra{a _ n}=\hat{1}

のことを言います.今回よく使うのは,やはり調和振動子の基底で

\sum _ {n=1} ^ {\infty}\ket{n}\bra{n} = \ket{0}\bra{0}+\ket{1}\bra{1}+\cdots = \hat{1}

です.状態は離散的な状況ではなく,例えば\ket{\bm{x}}のように連続的な状況も考えますので,このときの完全性は

\int\text{d} ^ 3 x\ket{\bm{x}}\bra{\bm{x}}=\hat{1}

積分の形で書けることになります.

ここから先を説明すると非常に長くなってしまうので,完全性については以上の計算規則までの説明にしておきます.数学的な側面はともかく,物理的な解釈は面白いので,気になった方はFeynman [2],[6]を読んでみてください.特に,[6]のほうは,完全性を含めたブラ-ケット記法の解釈の仕方の話ががよく書かれていたと思います5

時間発展演算子

時間依存する状態\ket{\psi,t}がSchrödinger方程式

i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\ket{\psi,t} = \hat{H}\ket{\psi,t} \tag{2.1}

を満たしているとしましょう.ここで,正体は不明なのですが,あるユニタリー演算子\hat{U}(t)が存在して,それが状態ケットの時間をt秒だけ発展させるとしましょう.つまり

\ket{\psi,t} = \hat{U}(t)\ket{\psi,0}

という関係が成り立っているとします.Schrödinger方程式(2.1)から,\hat{U}(t)を求めてみましょう.代入すると

i\hbar\frac{\partial \hat{U}(t)}{\partial t}\ket{\psi,0} = \hat{H}\hat{U}(t)\ket{\psi,0}

となります.ここで,\ket{\psi,0}はもはや時間tに依存しない状態ケットになっています.よって,演算子微分方程式が取り出せて

i\hbar\frac{\partial \hat{U}(t)}{\partial t} = \hat{H}\hat{U}(t) \tag{5.2}

というのが,\hat{U}(t)の方程式となります.ここで\hat{U}(t)

\hat{U}(t) = \exp\left[-\frac{i}{\hbar}\hat{H}t\right] \tag{5.3}

とおけば,これが式(5.2)を満たしていることはただちにわかります.この式(5.3)で与えられる\hat{U}(t)は,状態\ket{\psi,0}t秒だけ進める働きがあり,このことから,この\hat{U}(t)時間発展演算子といいます.この時間発展演算子は,ハミルトニアンがエルミートであること\hat{H} ^ {\dagger}=\hat{H}から,

\hat{U} ^ {\dagger}(t) = \exp\left[+\frac{i}{\hbar}\hat{H}t\right] = \hat{U} ^ {-1}(t)

であるため,ユニタリーであることが確かめられます.

次に,場の量子論を展開するうえで重要な「描像」という概念を紹介しましょう.

先に定義だけ述べてしまうと,時間依存する状態をSchrödinger描像といい,時間依存しない状態をHeisenberg描像といいます.例えば,先ほどの例だと\ket{\psi,t}はSchrödinger描像で,\ket{\psi}\equiv\ket{\psi,0}がHeisenberg描像でした.

Heisenberg描像は時間依存しない状態ケットを扱いますが,その代わりに演算子を時間発展させることで時間依存する系を取り扱います.これらの描像は,ただの表示の仕方の話なので,それらが意味する物理量-期待値-は本来同じはずです.すなわち

\braket{\psi,t|\hat{A} _ S|\psi,t} = \braket{\psi|\hat{A} _ H(t)|\psi}

のような関係が成り立つはずです.左辺はSchrödinger描像で,右辺がHeisenberg描像になっています.時間発展演算子を用いれば,\ket{\psi,t}=\hat{U}(t)\ket{\psi}なので

\hat{A} _ H(t) = \hat{U}\hat{A} _ S\hat{U} ^ {-1} = e ^ {i\hat{H}t/\hbar}\hat{A} _ Se ^ {-i\hat{H}t/\hbar}

のように演算子は変換されます.演算子を時間発展させるためには,このように\hat{U}(t)を左右から挟まないといけないことに注意してください.

最小作用の原理

少し量子力学から話題がそれますが,物理学の重要な定式化の一つであるラグランジアン形式を紹介したいと思います.このラグランジアン形式は根本的なところで経路積分にかかわってきます.なお,この節では自然単位系c=\hbar=1を用います.

座標q _ 1,\cdots,q _ N,速度\dot{q} _ 1,\cdots,\dot{q} _ Nを変数とする物理量をラグランジアンといい,

L(q _ 1,\cdots,q _ N,\dot{q} _ 1,\cdots,\dot{q} _ N) = L(q,\dot{q})

と書くことにします.位置と速度はそれぞれ時間tの関数なので,それの時刻t _ iからt _ fまでの積分作用(action)と呼び

S = \int _ {t _ i} ^ {t _ f}\text{d}t\ L(q(t),\dot{q}(t))

と書くことにします.

古典論では,粒子の経路q(t),\dot{q}(t)が一意的に定まることになっています.それは,「作用が最小となるような経路を粒子は動く」というア・プリオリな前提を与えることで決定することができます.この原理を最小作用の原理といいます.ここらへんの議論はあまり得意ではないのですが,ひとまずこの原理を前提として定式化を図ることにします.

この最小作用の原理を数式として適用し,その計算をすることで,方程式

\frac{\text{d}}{\text{d}t}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}}\right)-\frac{\partial L}{\partial q} = 0

が得られます.これはEuler-Lagrange方程式といわれ,古典論における運動方程式です.この方程式で古典論における粒子が通る道筋を決定することができます.

量子論だと,粒子が伝播する経路は一意的には定まりません.では,すべての粒子が自由に何も拘束されることなく運動しているかと言われれば,それはあまり現実的ではありません.量子論における粒子の運動は,確率振幅を決定する方程式が規定することになります.例えば,量子力学ではSchrödinger方程式です.

Schrödinger方程式は,相対論の効果(Lorentz不変性)を考慮していません.したがって,Schrödinger方程式を基礎方程式として,場の量子論を組み立てるのは困難でしょう6.そこで,そもそもLorentz不変性である量から基礎方程式を求めることを考えます.その方法が,上でやったラグランジアン形式になります.

場の量子論における方程式は,確率振幅によって記述されるので,それにともなってラグランジアンの変数は\phi,\partial _ {\mu}\phiとしておきます.このラグランジアンは,位置を変数にもっていないので,そこからlocalな成分をとりだすことが必要になってきます.そこで,

L(\phi,\partial _ {\mu}\phi) = \int \text{d} ^ 3 x\ \mathcal{L}(\phi(\bm{x}),\partial _ {\mu}\phi(\bm{x}))

ラグランジアンが空間積分の形で書けるとしましょう.この\mathcal{L}ラグランジアン密度といいます.この表式を用いれば,場の作用は

S = \int\text{d}t\int \text{d} ^ 3 x\ \mathcal{L}(\phi(\bm{x}),\partial _ {\mu}\phi(\bm{x})) = \int\text{d} ^ 4 x\ \mathcal{L}

と書けます.時間をt=x ^ {0}として,積分変数をまとめてしまいました.実はこの形がLorentz不変になっています7.したがって,この作用から古典論と同様にして運動方程式を導出することができ,さらにその方程式はLorentz不変性をもっています.その方程式は

\partial _ {\mu} \left(\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial _ {\mu}\phi)}\right) - \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial\phi} = 0

であり,これが場の量子論におけるEuler-Lagrange方程式です.

例えば,Spinが0のスカラー場のラグランジアン密度は

\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial _ {\mu}\phi\partial ^ {\mu}\phi - \frac{1}{2}m ^ 2\phi ^ 2

であたえられます.この系の運動方程式は,Euler-Lagrange方程式に代入することで

(\partial _ {\mu}\partial ^ {\mu}+m ^ 2)\phi=0

と求められます.これはKlein-Gordon方程式といわれています.

以上で,preliminaryの部分は終わりです.

3. 経路積分

それでは経路積分のお話に入りましょう.

経路積分によって定義する量は,次の振幅

U(q _ a,q _ b;T)\equiv \braket{q _ b|e ^ {-iH(q,p)T}|q _ a} \tag{3.1}

であり,遷移振幅(transition amplitude)と言われています.この式は「状態\ket{q _ a}T秒間時間発展させた状態の中に,状態\ket{q _ b}を見出す確率振幅」ということができます.この量を,より計算しやすい形に書き直すのが経路積分による定式化です.

積分の形を導出するので,ひとまず区間を離散的に分割し,その極限をとる方針で行きましょう.まずは,時間TN個の区間に分割します.ここで,\varepsilon\equiv T/Nと定義すると,T=\varepsilon+\cdots+\varepsilonとなるので,完全性を用いれば

\begin{aligned} & \braket{q _ b|e ^ {-iH(q,p)T}|q _ a} \\ &= \int\text{d}q _ {N-1}\cdots\int\text{d}q _ {1} \\ &\hspace{15pt} \times \braket{q _ N|e ^ {-iH(q,p)\varepsilon}|q _ {N-1}}\cdots\braket{q _ 1|e ^ {-iH(q,p)\varepsilon}|q _ 0} \\ & = \prod _ k \left( \prod _ i\int\text{d}q _ k ^ i \right)\braket{q _ {k+1}|e ^ {-iH(q,p)\varepsilon}|q _ k} \end{aligned} \tag{3.2}

となります.添え字iは時空の添え字で,k区間の添え字であり,q _ 0=q _ a, q _ N=q _ bとしておきます.経路積分の説明で「あらゆる経路において足し合わせる」といったような説明がありますが,ここでの計算のことを意味しているのだと思います.いま,q _ 1,\cdots,q _ {N-1}\mathbb{R}上での積分変数なので,それらの取りうる値の組み合わせによってあらゆる経路が指定されることになるからです.(正確には\varepsilon\rightarrow 0の極限においてですが.)

さて,式(3.2において,それぞれの振幅\braket{q _ {k+1}|e ^ {-iH(q,p)\varepsilon}|q _ k}を計算しようと思うのですが,ここで一般に,qpの関数をそれぞれf(q),g(p)とおいて,それらを位置状態のブラとケット\bra{q _ {k+1}},\ket{q _ k}ではさんだものがどうなるかを考えます.f(q)をはさむ場合は,f(q)のべき級数展開を考え,それを右のケット\ket{q _ k}に作用させて,再びべき級数展開を戻せばいいので

\braket{q _ {k+1}|f(q)|q _ k}=f(q _ k)\braket{q _ {k+1}|q _ k} \tag{3.3}

となります.\braket{q _ {k+1}|q _ k}の値ですが,物理学ではよく

\delta(x-x _ 0) = \int\frac{\text{d}p}{2\pi}e ^ {ip(x-x _ 0)}

という運動量空間での積分による\delta-関数の表示を使いますので,それを用いて

\braket{q _ {k+1}|q _ k} = \prod _ i \delta(q _ k ^ i-q _ {k+1} ^ i) = \left( \prod _ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi} \right) \exp\left[ i\sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i) \right]

のようにします.したがって,式(3.3)

\braket{q _ {k+1}|f(q)|q _ k} = f\left(\frac{q _ k + q _ {k+1}}{2}\right)\left( \prod _ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi} \right) \exp\left[ i\sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i) \right]

のようになります.少しfの中身をいじりましたが,値自体は変わりません.一方で,g(p)については

\begin{aligned} \braket{q _ {k+1}|g(p)|q _ k} & = \left( \prod _ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi} \right) \\ &\times g(p _ k) \exp\left[ i\sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i) \right] \end{aligned}

のようになります8.よって,一般の2変数関数F(q,p)

\begin{aligned} \braket{q _ {k+1}|F(q,p)|q _ k} & =\left(\prod _ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi}\right) \\ &\times F\left(\frac{q _ {k+1}-q _ k}{2},p _ k\right)\exp\left[i\sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k)\right] \end{aligned}

となります9.これを用いれば式(3.2)を計算することができます.つまり,

\begin{aligned} &\braket{q _ b|e ^ {-iH(q,p)T}|q _ a} = \left( \prod _ {i,k}\int\text{d}q _ k ^ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi} \right) \\ & \times \exp\left[ i\sum _ k\left( \sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i)-\varepsilon H\left(\frac{q _ {k+1}+q _ k}{2},p _ k\right) \right) \right] \end{aligned}

です.最後に,\varepsilon\rightarrow 0の極限をとってみましょう.eの指数は

\begin{aligned} &i\sum _ k\left( \sum _ i p _ k ^ i(q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i)-\varepsilon H\left(\frac{q _ {k+1}+q _ k}{2},p _ k\right) \right) \\ &= i\varepsilon\sum _ k\left( \sum _ i p _ k ^ i\frac{q _ {k+1} ^ i-q _ k ^ i}{\varepsilon}-H\left(\frac{q _ {k+1}+q _ k}{2},p _ k\right) \right) \\ &\rightarrow i\int _ {0} ^ {T}\text{d}t\ \left( \sum _ i p ^ i\dot{q} ^ i-H\left(q,p\right) \right) \end{aligned}

のようになります.この極限操作に伴い積分変数も変わってきますが,kの数が無限大になるので

\prod _ {i,k}\int\text{d}q _ k ^ i\int\frac{\text{d}p _ k ^ i}{2\pi} \rightarrow \int\mathcal{D}q(t)\mathcal{D}p(t)

と改めて書くことにしておきます.この記法を用いれば,遷移振幅(3.1)経路積分による定式化は

\begin{aligned} &\braket{q _ b|e ^ {-iH(q,p)T}|q _ a} = \int\mathcal{D}q(t)\mathcal{D}p(t) \ \\ &\hspace{20pt} \times \exp\left[ i\int _ {0} ^ {T}\text{d}t\ \left( \sum _ i p ^ i\dot{q} ^ i-H\left(q,p\right) \right) \right] \end{aligned} \tag{3.4}

となります.これで位相空間における経路積分が得られました.

導出においてはあまり言及はしていませんでしたが,式(3.4)\expの中身は,i\times (\cdots)の形をしていますので,位相のズレとみなすことができます.もし,pについての積分が実行できれば,より簡単に

\begin{aligned} & \int\mathcal{D}q\mathcal{D}p \exp\left[ i\int _ {0} ^ {T}\text{d}t\ \left( \sum _ i p ^ i\dot{q} ^ i-H\left(q,p\right) \right) \right] \\ &\hspace{30pt} = \int\mathcal{D}q \exp\left[ i\int _ {0} ^ {T}\text{d}t\ L(q,\dot{q}) \right] \\ &\hspace{30pt} = \int\mathcal{D}q\ e ^ {iS} \end{aligned}

と書くことができます.この表式より,作用Sが位相のズレをあらわしていると考えることができます.この考え方は,第5章で述べるFeynmanの仮定に関わってきます.

4. 場の量子化

経路積分による量子化の恩恵として,一番簡単なスカラー場の量子化を紹介していきたいと思います10

量子化」と単にいいましたが,ここではFeynman則(Feynman rules)というものが導出できれば量子化が達成されたとひとまずみなします.Feynman則というのは,後で定義する「相関関数」の具体的な値を計算するための方法となっています.

相関関数(correlation function)というのは,

\braket{0|\phi(x _ 1)\phi(x _ 2)|0} \ ,\ \ (x _ 1 ^ 0>x _ 2 ^ 0)

で定義されます11.以下ではx _ 1 ^ 0>x _ 2 ^ 0の状況で議論を進めていこうと思います.この式の意味ですが,\phi(x)が実スカラー場のoperatorであることに注意すれば「状態\phi(x _ 2)\ket{0}のなかで,状態\phi(x _ 1)\ket{0}を見つける確率振幅」と解釈することができます.状態\phi(x _ 1)\ket{0}というのが少し謎ですが,いろいろな粒子同士の散乱振幅を調べるときにこの関数が出てくることになり,そこにモチベーションがあります.

この相関関数は

\begin{aligned} & \braket{0|\phi(x _ 1)\phi(x _ 2)|0} = \\ & \lim _ {T\rightarrow\infty(1-i\varepsilon)} \frac{\int\mathcal{D}\phi\ \phi(x _ 1)\phi(x _ 2)\exp\left[i\int\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right]}{\int\mathcal{D}\phi\ \exp\left[i\int\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right]} \end{aligned} \tag{4.1}

という関係を満たしており,ここに経路積分がかかわってきます.なお,指数関数の肩の積分-T\rightarrow T,\ \mathbb{R} ^ 3で行います.

場の状態にたいして,公式(3.4)を用いると

\begin{aligned} \braket{\phi _ b|e ^ {-iHT}|\phi _ a} &= \int\mathcal{D}\phi\mathcal{D}\pi \ \\ & \times \exp\left[ i\int\text{d} ^ 4 x\ \left( \pi\dot{\phi}-\mathcal{H} \right) \right] \\ & =\int\mathcal{D}\phi \ \exp\left[ i\int\text{d} ^ 4 x\ \mathcal{L} \right] \end{aligned}

のようになります.公式を用いる際,運動量密度\piハミルトニアン密度\mathcal{H}を用いることによって,4元量の積分に書きなおしました.このようにして,ハミルトニアンによる定式化からラグランジアン形式に移行しました.この等式を使って式(4.1)を導出していきましょう.

まずは,式(4.1)の分子

\int\mathcal{D}\phi\ \phi(x _ 1)\phi(x _ 2)\exp\left[i\int\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right] \tag{4.2}

の評価から考えましょう.\int\mathcal{D}\phiというのは「x _ 1,x _ 2で逐次積分する」ということなので,まずは空間成分\bm{x}積分することを考えましょう.この際,\phi _ i(\bm{x})\equiv\phi(x _ {i} ^ 0,\bm{x})と定義すると

\int\mathcal{D}\phi=\int\mathcal{D}\phi _ 1\int\mathcal{D}\phi _ 2\int\mathcal{D}\phi(\bm{x})

とかけることになります.さて,それでは式(4.2)\phi(\bm{x})から積分していくことを考えましょう.つまり,

\begin{aligned} \int\mathcal{D}\phi(\bm{x})& \phi(x _ 1)\phi(x _ 2) \exp\left[i\int _ {-T} ^ {T}\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right] \\ &= \phi(\bm{x} _ 1)\phi(\bm{x} _ 2) \int\mathcal{D}\phi(\bm{x}) \exp\left[i\int _ {-T} ^ {T}\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right] \end{aligned}

です.ここで,積分の部分が公式(3.4)の形になっていることに気がついたでしょうか.つまり

\begin{aligned} & \int\mathcal{D}\phi(\bm{x}) \exp\left[i\int _ {-T} ^ {T}\text{d} ^ 4x\mathcal{L}\right] \\ &= \int\mathcal{D}\phi(\bm{x}) \exp\left[i\left(\int _ {-T} ^ {x _ 2 ^ {0}}+\int _ {x _ 2 ^ {0}} ^ {x _ 1 ^ {0}}+\int _ {x _ 1 ^ 0} ^ {T}\right)\right] \\ &= \braket{\phi _ b|e ^ {-iH(T-x _ 1 ^ {0})}|\phi _ 1} \braket{\phi _ 1|e ^ {-iH(x _ 1 ^ {0}-x _ 2 ^ {0})}|\phi _ 2} \braket{\phi _ 2|e ^ {-iH(x _ 2 ^ {0}+T)}|\phi _ a} \end{aligned}

といった感じになります12.したがって,式(4.2)

\begin{aligned} (4.2) &= \int\mathcal{D}\phi _ 1(\bm{x} _ 1)\int\mathcal{D}\phi _ 2(\bm{x} _ 2) \phi(\bm{x} _ 1)\phi(\bm{x} _ 2) \\ &\times \braket{\phi _ b|e ^ {-iH(T-x _ 1 ^ {0})}|\phi _ 1} \braket{\phi _ 1|e ^ {-iH(x _ 1 ^ {0}-x _ 2 ^ {0})}|\phi _ 2} \braket{\phi _ 2|e ^ {-iH(x _ 2 ^ {0}+T)}|\phi _ a} \\ &=\int\mathcal{D}\phi _ 1(\bm{x} _ 1)\int\mathcal{D}\phi _ 2(\bm{x} _ 2) \\ &\hspace{30pt}\times \braket{\phi _ b|e ^ {-iH(T-x _ 1 ^ {0})}\phi _ S(\bm{x} _ 1)|\phi _ 2} \\ &\hspace{30pt}\times \braket{\phi _ 2|e ^ {-iH(x _ 1 ^ {0}-x _ 2 ^ {0})}\phi _ S(\bm{x} _ 2)|\phi _ 1} \\ &\hspace{30pt}\times \braket{\phi _ 1|e ^ {-iH(x _ 2 ^ {0}+T)}|\phi _ a} \\ &= \braket{\phi _ b|e ^ {-iH(T-x _ 1 ^ {0})}\phi _ S(\bm{x} _ 1)\cdot e ^ {-iH(x _ 1 ^ {0}-x _ 2 ^ {0})}\phi _ S(\bm{x} _ 2)\cdot e ^ {-iH(x _ 2 ^ {0}+T)}|\phi _ a} \\ &= \braket{\phi _ b|e ^ {-iHT}\phi _ H(x _ 2)\phi _ H(x _ 1)e ^ {-iHT}|\phi _ a} \end{aligned}

となります.ここで,添え字のSShrödinger描像で,HはHeisenberg描像となっています.次の関係

\hat{\phi} _ S(\bm{x})\ket{\phi}=\phi(\bm{x})\ket{\phi} \ ,\ \ \int\mathcal{D}\phi\ \ket{\phi}\bra{\phi}=\bm{1}

を用いて計算していることに注意してください.(あえてハットをつけておきます.)

ここで,e ^ {-iHT}\ket{\phi _ a}から\ket{0}を取り出すことを考えましょう.そのためには,完全性を用いればうまくいくことがわかっています.つまり

\begin{aligned} e ^ {-iHT}\ket{\phi _ a} &= \sum _ {n}e ^ {-iHT}\ket{n}\braket{n|\phi _ a} \\ &= e ^ {-iE _ 0 T}\left\{ \braket{0|\phi _ a}\ket{0} + \sum _ {n\neq 0}\braket{n|\phi _ a}e ^ {-i(E _ n-E _ 0) T}\ket{n} \right\} \end{aligned}

です.同様にして

\bra{\phi _ b}e ^ {-iHT} = e ^ {-iE _ 0 T}\left\{ \braket{\phi _ b|0}\bra{0} + \sum _ {n\neq 0}\braket{\phi _ b|n}e ^ {-i(E _ n-E _ 0) T}\bra{n} \right\}

も得られます.ここで,E\equiv E _ n-E _ 0>0として,T\rightarrow T-Ti\varepsilonと少しだけ虚部を加えれば

e ^ {-iET} \rightarrow e ^ {-\varepsilon ET}\cdot e ^ {-iET}

のように位相以外の因子が得られるので,この状態でT\rightarrow\inftyとすれば絶対値が0になります.これは,T\rightarrow\infty(1-i\varepsilon)という操作に対応しているので,結局

\begin{aligned} &\braket{\phi _ b|e ^ {-iHT}\phi _ H(x _ 2)\phi _ H(x _ 1)e ^ {-iHT}|\phi _ a} \\ &\hspace{20pt} \xrightarrow[T\rightarrow\infty(1-i\varepsilon)]{} \\ & e ^ {-iE _ 0\cdot\infty(1-i\varepsilon)}\braket{\phi _ b|0}\braket{0|\phi _ a} \braket{0|\phi _ H(x _ 2)\phi _ H(x _ 1)|0} \end{aligned}

というようになります.e ^ {-iE _ 0\cdot\infty(1-i\varepsilon)}というのは不思議な量ですが13,次に考えるように

\begin{aligned} &\hspace{10pt} \int\mathcal{D}\phi \ \exp\left[ i\int\text{d} ^ 4 x\ \mathcal{L} \right] = \braket{\phi _ b|e ^ {-iHT}|\phi _ a} \\ &= e ^ {-iE _ 0 T}\braket{\phi _ b|0}\braket{0|\phi _ a} + \sum _ {n\neq 0}e ^ {-iE _ n T}\braket{\phi _ b|n}\braket{n|\phi _ a} \\ &\rightarrow e ^ {-iE _ 0\cdot\infty(1-i\varepsilon)}\braket{\phi _ b|0}\braket{0|\phi _ a} \end{aligned}

となることに注意すれば,式(4.1)が成り立つことがわかります.

さて,それではFeynman則を求めてみましょう.いくつか求める方法はありますが,今回はスマートな方法として汎関数(fanctional)を用いてみたいと思います.

汎関数微分\delta/\delta J(x)の数学的な定義は知りませんが,以下の性質が成り立つとします:

\frac{\delta}{\delta J(x)}J(y) = \delta ^ {(4)}(x-y) \ ,\ \ \frac{\delta}{\delta J(x)}\int \text{d} ^ {4}y J(y)\phi(y) = \phi(x) \ .

この性質を用いて,Feynman則を導出していきましょう.そのためには,次の生成汎関数

Z[J] \equiv \int\mathcal{D}\phi\ \exp\left[ i\int\text{d} ^ 4 x \left[\mathcal{L}+J(x)\phi(x)\right] \right]

を定義しておきます.これを用いれば

\begin{aligned} &\hspace{10pt} \left. \frac{\delta}{\delta J(x _ 1)}\frac{\delta}{\delta J(x _ 2)} Z[J] \right| _ {J=0} \\ &= -\int\mathcal{D}\phi\ \phi(x _ 1)\phi(x _ 2)\exp\left[ i\int\text{d} ^ 4 x \left[\mathcal{L}\right] \right] \end{aligned}

となるので,式(4.1)

\braket{0|\phi(x _ 1)\phi(x _ 2)|0} = -\frac{1}{Z[0]}\left. \frac{\delta}{\delta J(x _ 1)}\frac{\delta}{\delta J(x _ 2)} Z[J] \right| _ {J=0} \tag{4.3}

となることがわかります.よって,あとはZ[J]の具体的な表式が別れば,この右辺の値が計算できることになります.

Z[J]を表示するためには,まずラグランジアン\mathcal{L}を定義しなければなりません.スカラー場を考えていますので

\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial _ {\mu}\phi\partial ^ {\mu}\phi-\frac{1}{2}m ^ 2\phi ^ 2

ラグランジアンとして採用します.ここで,

\partial ^ \mu(\phi\partial _ \mu\phi) = \partial _ {\mu}\phi\partial ^ {\mu}\phi+\phi\partial ^ 2\phi

に注意すると,Gaussの定理から表面項は無視できて

\int\text{d} ^ 4 x \left[\mathcal{L}+J\phi\right] = \int\text{d} ^ 4 x \left[-\phi(\partial ^ 2+m ^ 2)\phi+J\phi\right] \tag{4.4}

となります.ここで,次のような空間の平行移動を行います:

\phi'(x)\equiv\phi(x)-i\int\text{d} ^ 4yD _ F(x-y)J(y)\ .

D _ F(x-y)はKlein-Gordon場の伝播関数で,

(\partial ^ 2+m ^ 2)D _ F(x-y) = -i\delta ^ {(4)}(x-y)

を満たしています.すごい仰々しい変換ではありますが,このような置き換えをするとうまいこと計算できるようになります.

先ほどの変換式を,式(4.4)に頑張って代入してみると

\begin{aligned} (4.4) &= \int\text{d} ^ 4x \left[ \frac{1}{2}-\phi'(\partial ^ 2+m ^ 2)\phi' \right] \\ &\hspace{20pt} +i \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y \frac{1}{2}J(x)D _ F(x-y)J(y) \end{aligned}

と書けるため,Z[J]は具体的に

\begin{aligned} Z[J] &= Z[0] \\ & \times \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \tag{4.5} \end{aligned}

となります.ここまでくれば,式(4.3)の値が計算できるようになり,やってみると

\braket{0|\phi(x _ 1)\phi(x _ 2)|0} = D _ F(x _ 1-x _ 2) \tag{4.6}

と求められることがわかります.あまり具体的にはやりませんが,式(4.5)J(x _ 2)で試しに汎関数微分してみると

\begin{aligned} \frac{\delta}{\delta J(x _ 2)}Z[J] &= Z[0]\frac{\delta}{\delta J(x _ 2)}\exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \\ &=-\frac{1}{2}Z[0]\left\{ \int\text{d} ^ 4y J(x _ 2)D _ F(x _ 2-y) + \int\text{d} ^ 4x D _ F(x-x _ 2)J(x _ 2) \right\} \\ &\ \ \ \times \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \\ &= -Z[0]\int\text{d} ^ 4x D _ F(x-x _ 2)J(x _ 2) \\ &\ \ \ \times \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \end{aligned}

となります.これをさらにJ(x _ 1)汎関数微分してJ=0とすると

\begin{aligned} &\hspace{10pt} -Z[0]\frac{\delta}{\delta J(x _ 1)}\int\text{d} ^ 4x D _ F(x-x _ 2)J(x _ 2) \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \\ &= -Z[0]\left\{ D _ F(x _ 1-x _ 2)-\int\text{d} ^ 4x D _ F(x-x _ 1)J(x _ 1) \right\} \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \\ &\xrightarrow[J=0]{} -Z[0]D _ F(x _ 1-x _ 2) \end{aligned}

となって,あとは公式(4.3)に代入すれば,(4.6)の結果がわかります.

(4.6)は2点相関関数(two-point correlation function)といわれ,最も基本的な確率振幅となっています.参考までに4点相関関数を計算しておくと

\begin{aligned} &\braket{0|\phi(x _ 1)\phi(x _ 2)\phi(x _ 3)\phi(x _ 4)|0} \\ &= \frac{\delta}{\delta J(x _ 1)}\frac{\delta}{\delta J(x _ 2)}\frac{\delta}{\delta J(x _ 3)}\frac{\delta}{\delta J(x _ 4)} \\ &\hspace{20pt} \left( \exp\left[ -\frac{1}{2} \int\text{d} ^ 4x\text{d} ^ 4y J(x)D _ F(x-y)J(y)\right] \right) \\ &= D _ F(x _ 1-x _ 2)D _ F(x _ 3-x _ 4) \\ &\hspace{5pt} + D _ F(x _ 1-x _ 3)D _ F(x _ 2-x _ 4) + D _ F(x _ 1-x _ 4)D _ F(x _ 2-x _ 3) \end{aligned}

となります.

以上で, (相互作用のない場ではありますが) Feynman則が求められました.少しごつごつした式が目立ちますが,やってることはほぼ普段の微分でした.

5. Shrödinger方程式の導出

この章では,Feynmanの論文[2]を参考にして,非相対論的な量子力学における経路積分量子化からShrödinger方程式が再現されることを確認してみます.なお,原論文を参考にする都合上,現在主流のDiracの記法を用いたスタイリッシュな形式とは異なります14.もし現代的な導出方法が気になった方は,例えば,Peskin, Schroeder[1]やSakurai[5]を参考にするとよいでしょう.また,ここでは空間は1次元で議論を進めていきたいと思います.

量子論と古典論の根本的な違いとして,「粒子が動く道筋を決定できない」というものあると紹介しました.ここではこの考え方を少し押し出した形で考えていくことにしましょう.古典論での粒子の動く道筋とは,ラグランジアンLの時間積分である作用Sを最小にするような経路x(t)を動くことを思い出しましょう.つまり

S=\int _ {t _ i} ^ {t _ f}L(x(t),\dot{x}(t))\text{d}x\ ,\ \ \ \delta S=0

となるような関数x(t)のことです.量子論に移行するためには,この作用Sから始めることになりますが,それはその値が最小となるような経路とは限らない,ということになります.

基本的なアイデアは遷移振幅の場合と同じで,時間を幅\varepsilonで分割していくところから考察をはじめていきます.ここで,「時刻t _ i\leq t\leq t _ {i+1}を移動している粒子は古典的である」と仮定しましょう15.とすると,時刻t _ iにおける位置をx _ iと書くことにすれば,時刻t _ iの位置x _ iから,時刻t _ {i+1}の位置x _ {i+1}に粒子が伝播するときの作用は

S(x _ {i+1},x _ {i}) = \text{min}\int _ {t _ i} ^ {t _ {i+1}}L(x(t),\dot{x}(t))\text{d}x

で与えればよいことがわかります.このことから,全体の区間の作用も

S=\sum _ {i}S(x _ {i+1},x _ {i})

で求められることがわかります.

ここで,Feynmanは次の仮定をおきます:

確率振幅に対する経路x(t)の寄与は

\exp\left[\frac{i}{\hbar}S[x(t)]\right]
という位相のズレとして与えられる.

この仮定についての説明はここでは省略させていただきます16.これを考慮すると,ある領域17Rに粒子が見つかる振幅は

\varphi(R) = \lim _ {\varepsilon\rightarrow 0} \int _ {R}\prod _ {i}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right]

と位相のズレの積分で書けることがわかります.ここででてきた定数Aは後で決定します.

次は,上の振幅を用いて波動関数を定義したいと思います.2つの領域R',R''を時刻t=t _ kで分割することを考えましょう.つまり,x _ k=x(t _ k)だったことを思い出すと

\underbrace{\cdots x _ {k-2},\ x _ {k-1}} _ {R'} ,\ x _ k ,\ \underbrace{x _ {k+1},\ x _ {k+2},\ \cdots} _ {R''}

というような感じです.この分割を用いれば,上の振幅\varphi(R)

\begin{aligned} \varphi(R',R'') &=\lim _ {\varepsilon\rightarrow 0} \int\text{d}x _ {k} \int _ {R'}\prod _ {i=-\infty} ^ {k-1}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right] \\ &\hspace{10pt}\times \int _ {R'}\prod _ {i=k+1} ^ {\infty}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right] \\ &\equiv \int\chi ^ {*}(x _ k,t)\psi(x _ k,t)\text{d}x _ {k} \tag{5.1} \end{aligned}

のように書けることになります.ここでいう\chi(x,t)\psi(x,t)が,経路積分による定式化における波動関数となります.例えば\psi(x,t)のほうの具体的な表式は

\psi(x _ k,t) = \int\prod _ {i=-\infty} ^ {k-1}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right]

です.少し話がそれますが,この定義(5.1)は,Diracの定式化とShrödingerの定式化を結んだ関係式

\braket{\chi|\psi} = \int\chi ^ {*}(x)\psi(x)\text{d}x

と類似していることに気がつくかと思います.

これで波動関数の定義も完了しました.あとはShrödinger方程式の導出にかかるだけです.Shrödinger方程式には波動関数の時間の1微分が入ってくるので,次の量

\psi(x _ {k+1},t+\varepsilon) = \int\prod _ {i=-\infty} ^ {k}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right]

を考えるところからスタートしたいと思います.ここの右辺の被積分関数ですが

\begin{aligned} \prod _ {i=-\infty} ^ {k}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp&\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right] \\ = \frac{\text{d}x _ {k}}{A}& \exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {k+1,x _ k})\right] \times\prod _ {i=-\infty} ^ {k-1}\frac{\text{d}x _ i}{A}\exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {i+1,x _ i})\right] \end{aligned}

i=kだけを分離して考えれば,i=-\infty,\cdots,x _ {k-1}の部分は波動関数に戻るので,変数に注意して

\begin{aligned} &\psi(x _ {k+1},t+\varepsilon) \\ &= \int \frac{\text{d}x _ {k}}{A} \exp\left[\frac{i}{\hbar}S(x _ {k+1,x _ k})\right] \psi(x _ {k},t) \end{aligned} \tag{5.2}

の関係が出てきます.次はS(x _ {k+1,x _ k})を計算することを考えましょう.ここでは,\varepsilonが微小量であることを考慮して,

S(x _ {i+1},x _ i) \approx \varepsilon L\left(\frac{x _ {i+1}-x _ i}{\varepsilon},x _ {i+1}\right)

と近似してしまいます18ラグランジアンL=m\dot{q} ^ 2/2-V(q)だったので,結局

S(x _ {i+1},x _ i) \approx \frac{m\varepsilon}{2}\left(\frac{x _ {i+1}-x _ i}{\varepsilon}\right) ^ 2-\varepsilon V(x _ {i+1})

で計算すればよいことがわかります.式(5.2)にこれを代入して整理して,x\equiv x _ {k+1},\ \xi\equiv x _ {k+1}-x _ {k}とすると

\begin{aligned} \psi(x,t+\varepsilon) &= \exp\frac{-i\varepsilon V(x)}{\hbar} \\ &\times\int\exp \frac{im\xi ^ 2}{2\varepsilon\hbar}\cdot\psi(x-\xi,t)\frac{\text{d}\xi}{A} \end{aligned} \tag{5.3}

となります.\xi積分を実行できそうな気がしますが,\psi(x-\xi,t)の変数部分に\xiがいるため,まだ積分を実行することができません.こういうときに便利なのはTaylor展開です.つまり

\psi(x-\xi,t) = \psi(x,t) - \xi\frac{\partial\psi(x,t)}{\partial x} + \frac{\xi ^ 2}{2}\frac{\partial ^ 2\psi(x,t)}{\partial x ^ 2} + \mathcal{O}(\xi ^ 3)

とすることで,式(5.3)積分が実行できるようになります.式(5.3)の左辺についてもTaylor展開をして\varepsilon1次の項までを考慮すれば,結局,式(5.3)

\begin{aligned} \psi(x,t)+&\varepsilon\frac{\partial\psi(x,t)}{\partial t} \\ &=\exp\left(-\frac{i\varepsilon V(x)}{\hbar}\right)\frac{\sqrt{2\pi\hbar\varepsilon i/m}}{A} \\ &\hspace{10pt} \times \left[\psi(x,t)+\frac{\hbar\varepsilon i}{2m}\frac{\partial ^ 2\psi(x,t)}{\partial x ^ 2}\right] \tag{5.4} \end{aligned}

となります19.両辺を比較してみると,左辺に\varepsilon0次の項があることがわかるので,その整合性のために定数A

A=\sqrt{\frac{2\pi\hbar\varepsilon i}{m}}

とおけばよいことがわかります.さて,式(5.4)において\expの因子を展開して,\varepsilon1次の項を比較し,両辺にi\hbarかければ

i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t} = -\frac{\hbar ^ 2}{2m}\frac{\partial ^ 2\psi}{\partial x ^ 2} + V(x)\psi

と,晴れてShrödinger方程式を得ることができました.このことから,経路積分による定式化から,波動力学の体系が再現されることがわかります.

6. おわりに

ここまでかなりハードな内容だったので,最後はゆるく,(私の)好きな音楽の話をして終わりにします.私はよく友達と音楽の話をよくするのですが,ワセマの人とはあまりその話をしてないので,この場を借りていっぱいレビューしちゃおうかなと思います.多すぎてもよくないので (それにしても多い?) ,1アーティストにつき1曲にするつもりです.思いついたものから書いていってるので,順番に特に意味はありません.

  1. B'z "夢見が丘"

    順番は関係ないといいましたが,最初は一番好きなアーティストをもってきました.最後のハモリとアウトロのギターが最高です.ファンの人がいたら,ぜひ話したいです!

  2. Mr.Children "虜"

    アルバム「深海」からです.「ゆりかごのある丘から」から「虜」,「花」,そして「深海」の流れが好きです.「シーラカンス」もいいですし,名曲ぞろいですね. ミスチルだったら「#2601」とかも好きです.

  3. Led Zeppelin "Stairway to Heaven"

    言わずと知れた名曲です.最近,LPでこれを聴くことができたのですが,本当に感動しました.正直,聴いたことがない人は,一度でいいので聴くべきだと思っています.ZEPなら,ほかには「Kashmir」,「When the Levee Breaks」とかいいです.

  4. 欅坂46 "月曜日の朝、スカートを切られた"

    歌詞もそうですが,曲全体に漂う無力感みたいな感じが好きです.欅坂なら「二人セゾン」も好きでした.

  5. Zimerman "Rachmaninoff Piano Concerto No. 2"

    音源がavailableなもののなかでは,Zimermanのが好きです.(どうでもいいですが,物理に出てくるLSZのZimmermannとはちょっとだけ名前が違います.) 辻井さんのRachmaninoffも勧められたのですが,そっちのほうはより柔らかい感じがして全くの別物という印象です.あっちもよかったです.

  6. いきものがかり "青春ライン"

    みんなの歌かなんかでこのアーティストを知りました.なんでこの曲を聴くようになったかはわかりませんが,かなり印象に残っている曲です.(調べたらアニメの主題歌だったらしいんですが,心当たりがないんですよね…)

  7. Deep Purple "Lazy"

    「Smoke on the Water」を聴くためにこのアルバムを聴いたのですが,逆にこの曲にハマってしまいました.Ritchie Blackmoreのソロが最高です.

  8. Miles Davis "So What"

    有名なアルバム「Kind of Blue」の1曲目からです.「ジャズを聴いてみたい!」と友達に相談したところ,まずはこれを聴けといった感じで紹介され聴くようになりました.個人経営の喫茶店とかだと意外とこのアルバムの曲が流れてたりします.

  9. 尾崎豊 "十七歳の地図"

    尾崎豊の1stアルバムの表題曲です.「15の夜」もそうですが,尾崎のロックはシンプルで好きです.ロックじゃないなら,「ダンスホール」とか印象的でした.

  10. SEKAI NO OWARI "青い太陽"

    こればかり聴いている友達(っていうのは言い過ぎですが)がいた気がします.歌詞の意味は英語も日本語もさっぱりわかりませんが,聴いて楽しいです.たぶん,言葉選びが良いのでしょう.

  11. Derek and the Dominos "Layla"

    Eric Claptonの代表曲の1つです.この時代のClaptonの曲はなかなかキレッキレで,聴いてて本当にワクワクします.たぶん,私自身がブルースベースの曲が好みなのもあるのかもしれません.

  12. 石川さゆり "津軽海峡・冬景色"

    想像力がないので,歌詞の状況が全然わからないのですが,日本語と歌がマッチしていて好きです.今は新幹線が北海道までつながってしまっていますが,そうでなかった頃の雰囲気が伝わってきて気に入っています.

  13. 布袋寅泰 "STILL ALIVE"

    BOOWYのギタリストの曲です.この曲はインパクトがあってとても好きなのですが,どうやら北斗の拳のパチンコ台でも流れるらしく,Youtubeのコメント欄がそれ関連で仕上がっているのもなんか好きです(笑)

  14. LiSA "明け星"

    紅白で初めて見ましたが,イントロが好きで聴くようになりました.LiSAは女性アーティストのなかでも声がはきはきしているので,たまに聴きたくなります.

  15. Aerosmith "Train Kept a Rollin'"

    もともとはYardbirdsの曲でしたが,ボーカルのSteven Tylerがそのバンドのことが好きでカバーした曲らしいです.エアロらしくハード寄りにカバーされてて楽しいです.Jeff Beckの記念ライブみたいなやつでSteven Tylerと一緒にこれをやっている音源もあって,そっちのほうもめちゃくちゃ大好きです.

  16. Jeff Beck, Johnny Depp "Isolation"

    Jeff BeckJohnny DeppによるJohn Lennonの曲のカバーです.異色のコラボですが,意外とJohnny Deppが曲の雰囲気にあっていて,Beckのアレンジも相まって素晴らしいカバーになっていると思います.

  17. Martha Argerich "Polonaise No. 6"

    友達とChopinを聴きに行くときに予習で聴いたアルバムの一つですが,見事にはまってしまいました.聴きたい曲がある場合,まずはArgerichの音源を探してしまいます.やっぱり彼女の演奏は迫力があって好きです.(どうやら生粋の気分屋のようで,調子がひどいときは本当にひどいらしいですが,リアルタイムの人間じゃないのでうまくいった音源しか聴くことはないでしょう.)

  18. Leo/need "ウミユリ海底譚"

    私が初めて音ゲーにトライしたときの曲でした.確かプロセカという名前だったと思います.かなりボコボコにされたので(友達のスマホでやりました),家でよく聴いてからリベンジしようと思ってたら気に入っちゃいました.もともとボカロの曲らしいですが,人間が歌っているバージョンのほうがやっぱり慣れてます.「ロキ」とか「アスノヨゾラ哨戒班」とかも同じアルバムに入っててよく聴くようになりました.(そろそろリベンジできるかも?(追記) ダメでした.)

  19. Nirvana "Smells Like Tenn Spirit"

    この人は本当にアーテイストなんだなと感じさせられます.「Nevermind」は本当に有名な古典なので,ぜひアルバムで聴いてもらいたいです.

  20. 福山雅治 "追憶の雨の中"

    デビュー曲です.福山はなぜかカッコイイので好きです.次のシングルの「逃げられない」とかも,ノリノリのロックンロールでした.

以上です.これを1つの章にしてもよかったのですが,あまり気が向かなかったのでここに書いてしまいました.ジャンルをばらけさせたので,何かしら知ってるアーティストはヒットしたんじゃないかなと思います20

長々と失礼しました.これで,今回の記事は終わります.目を通してくださり,本当にありがとうございました.

7. 参考文献

[1]: M. E. Peskin, and D. V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory, CRC Press, 1995.

場の量子論の教科書の中では最も有名な本ではないでしょうか.相対論的量子力学の導入がなされ,経路積分の紹介が始まるかと思いきや,いきなり散乱の話題になり,Feynmanダイアグラムをやることになります.現時点で私がしっかり計算を追えているのはそのあたりまでですが,ちゃんとしたformalismを学習せずにやるので「この詳しい証明は第**章でやることになる」っといった一文がすでにあちこちにあります.「適材適所」というようなことが裏表紙のHarveyのReviewにはありましたが,その負の一面かもしれません.ちゃんと一冊通読しきれれば問題はないはずですが,経路積分繰り込みぐらいは先に勉強してから読んだほうがモヤモヤは少なくて済んだのかなと思います.(ここらへんについては,1年後はまったく別のこと言ってそうです.)

[2]: R. P. Feynman, Rev. Mod. Phys. 20, 367 - 387 (1948).

WINEからオンラインで入手することができます.最初は古典論と量子論の確率の取り扱いの違いからスタートして,確率振幅の経路積分表示の説明が始まり,それを基盤とした量子力学の様々なformalismに対して言及しています.例えばShrödinger方程式の話題以外にも,正準交換関係や調和振動子の話があります (まだまだあります).気になった方は各自で確認していただきたいのですが,「Hamilton-Jacobi方程式から始めれば,ここでやった方法よりもさらにエレガントにShrödinger方程式を導出できる」というようなことが10章の最後に書いてありました.おそらく該当する箇所はありません.この一文はなんだったのでしょうか(笑)

[3]: 坂井 典佑,『場の量子論』,裳華房,2009.

場の量子論を概観してみたいと思い,なるべく薄い日本語の本を図書館で探していたところ,この本を見つけました.評判は知りませんが,ゲージ場の内容を中心としてよくまとまっていると思いました.今後もお世話になると思います.ただし,一番最初に読む本ではないです.買う本というよりも,借りて読む本という認識です.ある程度学んでから読んでみると知識が整理されると思います.

[4]: ランダウ = リフシッツ,広重 徹, 水戸 巌 訳,『力学 (ランダウ = リフシッツ 理論物理学教程) 』(増刊第3版),東京図書,2020.

[5]: J. J. Sakurai, Modern Quantum Mechanics, The Benjamin/Cummings Publishing Company, Inc, 1985.

[6]: Feynman, Leighton, Sands, The Feynman Lecture on Physics III, Basic Books, New York, 2011.


  1. たぶん,経路積分(というよりも場の量子論)の話で出てくる式がなかなかゴツいせいもあるかもしれません.もともとの計算がハードなので,ある程度省略しても,やはりそれなりの分量にはなってしまうのだと思います.
  2. なんだかんだ言って,自分の興味ある分野のReviewを見るのは楽しいですよね(笑)
  3. 今の素粒子理論はhigh-energyなため,そこらへんを気にしてもしょうがないのはわかりますが,実験や観測などの研究は困らないのかとは思ったりもします.
  4. あまり詳しくはないのですが,「Hamiltonの原理」も似たような感じだったと思います.有名な力学の教科書[4]では,同じ取り扱いを受けてしまっていますが,それが原因で「最小作用の原理=Hamiltonの原理」という認識が蔓延してしまった,というのを誰かが言っていた記憶があります.
  5. Stern–Gerlachの実験を題材にしていましたが,変にスピンの話にこだわらず,現象論的に何が起こるのかを説明していて,私はあの説明で腑に落ちました.
  6. 一応,Schrödinger方程式からLorentz不変な方程式に移行することはできたはずです.うろ覚えですが.
  7. この作用がLorentz不変であることをちゃんと示すとなると,少し知識が必要です.ラグランジアン密度がそもそも不変であることと,Jacobianが1であることを示す必要があります.
  8. 話の流れが悪くなるのでここでは言及しませんでしたが,f(q)の場合とは異なり,p _ kについての完全性を用いることで計算することになります.
  9. 2変数になると,この等式が一般には成り立つとは限りません.気になった方は「Weyl順序」を調べるとよいでしょう.
  10. スカラー場の量子化は,経路積分を用いなくても可能です.経路積分の恩恵はむしろゲージ場の量子化にあるといえるはずですが,非可換ゲージ理論にあらわれる概念の準備もしなくてはならず,流石にしんどいのでここではスカラー場で妥協させてください(笑)
  11. T積を用いて定義したほうがいろいろ役立つのですが,この記事ではその恩恵は特にないのでこのように定義しました.また,\ket{0}基底状態を意味するのですが,実は,調和振動子の基底とは異なり,\ket{\Omega}と書くことで区別するのが普通です.
  12. x _ 1 ^ 0x _ 2 ^ 0はここでの積分では固定されているので,そこで区間を分割しなくてはならないことに注意してください.
  13. 2\cdot\infty=\inftyとなっています.
  14. 例えば,汎関数法などの便利な定式化もここでは十分にはなされていないため,やはり離散的な状況の極限として考えることになります(汎関数法の気持ちも同じようなものだと思いますが).
  15. 無限小の時間幅でなら古典論で近似していい,というのはかなり強引ですが,これでうまくいくのでひとまず認めます.
  16. 全部は読めていないのですが,軽く目を通した感じでは物理的意味の説明はありませんでした.[1]では,古典論的な状況での類推から,位相のズレと作用Sが同じ性質をもっているとして説明を与えていました.興味のある方はそちらを参照していただければと思います.とにかく,このような仮定から非相対論的量子力学の体系が構成できることが重要なのだと思っています.
  17. 本文では“region”でした.こういった言い回しは私が目を通した教科書では出てこなかったので,やはり原論文なのだなと思います.
  18. 本文では,直交座標系ならこの近似は可能だと書いてあります.微小区間では古典的な場合を仮定しているため,そこでの経路はさらに近似を加えてほぼ直線とみなせるので,ここでの近似はある程度は正当化されます.
  19. ここでのステップには,(かなりごちゃごちゃした)積分の計算と近似の正当化がありましたが,かなり煩雑なので省略しました.
  20. 自分が挙げたものを眺めると,ジャンルは確かにばらけていますが有名どころしか聴いてないですね.いろいろなところからアーティストを発掘してくる人は本当にすごいと思います.