相対性理論とは
はじめまして。物理学科3年のミヤネといいます。 6/26(日)のアドカレを担当します。
最近、相対性理論の勉強をしているので、復習もかねて相対論の話を書こうかと思います。できるだけ根本的な概念を丁寧にやってみて、残りの余力で一般相対性理論の話題や、少し数学との関連について触れてみました。ただ、勉強し始めて日が浅いこともあり、やけに詳しく書かれていたり、逆に誤魔化したりと文章にムラができてしまいました。相対論の雰囲気を知る感じで、軽く読んで欲しいです。
また、読んでみればわかると思うのですが、注釈がかなり多くなってしまいました。当初は、文章を堅苦しい感じにしたくなくて、ぶっちゃけた話を注釈にまとめるようにしていったのですが、かえってウンチクっぽい、うざったい文章になってしまったかもしれません…。 見づらいかな、と思い各節の最後にまとめて置いています。箸休め的なノリで、好きなタイミングで読んでみてください。
相対性理論とは
歴史的な話は調べれば出てくるのでよいでしょう ^ {1}。
相対性理論の話になるとよく挙がるのが、「浦島太郎効果」や「双子のパラドックス」だと思います。そうです、観測者によって時間のたち方が違うっていうアレです。これらの話はまぎれもない事実で、実際に微妙な時間のズレを検出できているそうです ^ {[4]}。
これらの驚くべき結果 ^ {2}は、これから定義する世界間隔が、慣性系によって不変であるという仮定をおくだけで正確に記述することができます。
世界間隔と固有時間
いきなりですが、座標軸がct,x,y,zからなる(仮想的な)4次元空間を考えましょう ^ {3}。この4次元空間での隣接した2点(ct,x,y,z),(ct+cdt,x+dx,y+dy,z+dz)の距離(の2乗)を考えます。普通に考えると
としたいところではありますが、あえて別の定義をします ^ {4}:
このdsを世界間隔といいます ^ {5,6}。これは「原点にいる観測者からみたとき」の量であることに注意しましょう。
このds ^ 2が、あらゆる慣性系において不変だとしましょう。そして、原点にいる私たちが、速度\bm{v}で移動している点を観測しているとしましょう。すると、ds ^ 2が不変であることから次の等式が成立します:
左辺は「原点から見たときの点の世界間隔」を表しており、右辺は「点が自分自身を見たときの世界間隔」となっています。この\tauはもちろん時間を表しているのですが、観測されている点の上での時間であることを注意しておきます。
この等式(2)を、次のように変形します。いま、点の速度が\bm{v}=\dfrac{d\bm{x}}{dt}であることに注意すれば、
となります。この等式から、d\tau< dtであることがわかります。これが浦島太郎効果です。
このd\tauは、移動している座標系での時間のたち方の物差しとなるため、固有時間といわれています。
計量テンソル
今後の話に関係してくるので、計量テンソル ^ {7}という量を紹介します。
そのまえに、かなり突然になってしまいますが、次のように反変成分というものを考えます:
このように書き換えると、(1)が次のように少し簡単になります:
少しだけ簡単になりました。なぜこんな表記をしたかというと、右辺をシグマ\sumを使って表そうとしているのです。
しかし、このままでは、マイナスが入ってしまっているため、まだ表すことができません。
そこで、次のようなテンソルを用意しましょう:
こうすると ^ {8}、(1’)はさらに
と書けることがわかります。短くなりすぎて胡散臭く思いますが、ちゃんと(3),(4)の定義を用いれば(1)に戻ります。
ここで、縮約といわれる規則を使いましょう。これは単純な話で「添え字がダブったら、\sumがなくてもそれについて和をとる」といった感じです。例えば、
というようになります。
この規則を用いれば、(1’’)は
となります。この係数g _ {\mu\nu}が計量テンソルといわれるものになります。
さきほど、下付きの添え字がサラリと出てきましたが、これも定義が存在します。添え字が下にある成分を共変成分といい、計量テンソルg _ {\mu\nu}と反変成分A ^ \nuをもちいて
と定義されます。「計量テンソルをかけると添え字が移動する」くらいの認識でいいと思います ^ {9}。
注釈
- 省略してしまいましたが、当時の議論などをちゃんと読んでみると意外と面白かったりします。たとえば、文献[2]では、Einstein自身が1918年に投稿した論文が引用されています。対話形式で相対性理論が解説されており、とても面白いです。
- どうでもいいことですが、この言い回しはよく和訳の本に出てくる気がします。気のせいかもしれません。
- Minkowski空間というらしいです。ただの4次元空間としか認識していなかったので、Wikipediaで調べたときは思わず笑ってしまいました。数学、素晴らしい。
- なぜ(1)のような定義をするのか気になった方は、相対論の本を手に取ってみてください。大体の本には書いてあるはずです。[1]にはありました。
- 符号を逆にして定義することもあります。つまりds ^ 2=-c ^ 2dt ^ 2+dx ^ 2+dy ^ 2+dz ^ 2です。「dtの項にマイナスをつける定義のほうが多い」ということをどこかで聞いたことがあります。私が読んだことのある限りでは半々です。
- このdtやらdxやらは、全微分などで初めて見ることと思います。初めて見たときはかなりギョッとするかと思いますが、dx\rightarrow\varDelta xだと思ってしまえばよいかと思います。
- 物理をやる人は、「テンソルはただの行列だ」くらいの認識でよいと思います。例えばA ^ {ik}はAという行列の(i,k)成分ですし、T _ {\mu\nu\lambda}はTという行列(!!?)の(\mu,\nu,\lambda)といったかんじです。ただし、A ^ {ik}を成分ではなく、そのまま行列ととらえることが多いように思います(例えば、(4)もそうですね)。慣習上の問題なので、雰囲気に慣れていきたいところです。
- このように2階のテンソルなら行列で書けます。1階ならベクトルです。「じゃあそう呼べばいいじゃん」と思いますが。とにかく、計算するときのイメージはこんな感じでよいはずです!
- 共変テンソルや反変テンソルにもちゃんと定義が存在します。座標変換に対してどのように変化するかによってテンソルかスカラーかが決まります。
「特殊」と「一般」、何が違うのか
計量テンソルの冒頭で「今後の話に関係してくるので」といいましたが、ここに関係してきます。
簡単に言うと、計量テンソルが(4)のようにきれいな形をしている場合を考えるのが特殊相対性理論です。逆に、もっと一般に、計量テンソルが(4)以外の場合、つまり
の場合 ^ {1}を考えるのが、一般相対性理論です。そういう意味では、一般相対性理論は特殊相対性理論を含んでいます ^ {2}。
一般相対性理論においては、計量テンソルの対角成分以外は重力場によって生じたと考えます。よく「重力が空間を曲げる」という表現を見ますが、これは次節に述べる第一基本形式を踏まえればよく分かると思います。
重力場の基本方程式はEinstein方程式です ^ {3}。前節を詳しくしすぎたので導出はしませんが、載せておきます ^ {4}:
R _ {ik}はRicciテンソルといい、Rはその縮約R:=R _ i ^ iです。Ricciテンソルは、空間の曲がり度合いに関係する量です。T _ {ik}はエネルギー・運動量テンソルで、その名の通りエネルギーや運動量に関連する物理量です。この方程式の導出は作用積分に基づくのですが、どうやらあのHilbertもこの方程式を得ていたそうです ^ {[2]}。
注釈
- もちろん、計量テンソルは何でもよいわけではなくて、ある程度の制限は存在します。たとえば、行列式g:=|g _ {ik}|の符号は負でなければいけません。
- だからといって、特殊相対性理論がいらなくなるわけではありません。ケースバイケースです。
- 話がそれますが、学科の友人は「Einstein方程式を勉強するときにはじめてEinsteinを書いた」といってました。
- [1]から引っ張ってきたので、cgs単位系の形となっています。この本は一貫してcgs単位系を採用しており、最初は混乱しました。
すこし、幾何学との関連を
Einsteinは突如として相対性理論を思いついたそうですが、なかなかその発想を定式化することができなかったといいます。そのことを大学の友人である数学者Grossmanに相談したところ、Riemann幾何学の発展を知り、協力して一般相対性理論の研究にとりかかったそうです ^ {1}。この通り、幾何学と重力理論の結びつきはとても強く ^ {2}、数学を用いた定式化が重要となってきます。
たとえば、少しでも曲面論をかじったことのある方は、(5)の形をみてピンときたかと思います ^ {3}。この形は、4次元部分多様体上での第一基本形式となっています。
この定式化を得るためには、n次元ユークリッド空間\mathbb{R} ^ nとm次元多様体Mを定義し、自然な座標系\bm{y}=(y ^ 1,\cdots,y ^ n)\in\mathbb{R} ^ nを導入したときの1次微分形式を考えるとよいです。
局所座標系(x ^ 1,\cdots,x ^ m)\in Mを使えば、Mは
の引き戻しによって、局所的に記述できます。
このようにして定義した座標系を用いて、接ベクトル束TM:=\bigcup T _ xMに内積gを導入したいです。しかしながら、\mathbb{R} ^ n上の自然な内積をそのままTMにいれても、それは内積になるでしょう ^ {4}。TMの基底は\frac{\partial}{\partial x ^ 1},\cdots,\frac{\partial}{\partial x ^ m}なので ^ {5}、それらの内積を
と定義しておきます。
ここで、任意の接ベクトル場X=\sum\xi ^ i\dfrac{\partial}{\partial x ^ i},\ Y=\sum\eta ^ j\dfrac{\partial}{\partial x ^ j}に対して、その内積をとってみる。すると、内積の性質を用いれば
となります。どうやらこれを
と書く習慣があるそうです。これが第一基本形式と言われるものになります。
第一基本形式があれば、もちろん曲面論における第二基本形式も定義できます。このようにして、m次元多様体に曲面の話を適用していけば、曲率を定義することができ、それがEinstein方程式へとつながっていきます。
注釈
- このことを記念して、3年に1回のペースで"Marcel Grossmann Meeting"という会議が開かれているそうです^{[5]}(なんと第6回は京都らしいです!)。
- もちろん幾何だけでなく、ほかの数学の分野とも結びつきはあります。例えば、Lorentz変換が群をなすことを生かして、そのLie代数を考え、Lorentz群の表現のすることができるそうです。
- このような煽る言い回し(ほかには「察しの良い読者は既に…」など)は、しばしば専門書に出てくることと思います。最初のころは、この文面を真に受けてショックを受けたりしていましたが、こういった言い方は読む上での一種のメルクマールのようなものだと思うようにしています。出会ったら一度これまでの内容を思い出してみて、ピンときたらそれはそれでよしで、思いつかなくても気合を入れ直して進めばよいでしょう。
- こういうのをみると、いつも読み流してしまいます。ごめんなさい。ちゃんと時間をとって読んでいきたいです…
- 最初に多様体の本を読んだとき「お、演算子か?」と思いましたが、遠からずも近からずです。
おわりに
以上で、本稿の内容は終わります。
今回は相対論の導入部分に役立ちそうな文章を目指して書きました。
相対性理論は古典物理学の花形にあたるもので、誰しもが一度は理解したいと思ったことがあるでしょう。「古典」というからには、相対性理論といえど、やはり現代物理の理論とは相いれない部分があります。(あるはずです!)
しかしながら、実験により相対性理論の正しさほとんど示されているようなもので、今後理論を作っていく場合は、相対性理論を内包するように作る必要があります。たぶん。したがって、相対性理論の理解は、基礎理論をやりたい人には必須といえるでしょう。
いろいろと偉そうに書いてしまいました。堂々とこのようなことを言えるように、今後も勉強を頑張っていきたいと思います。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
参考文献
- ランダウ=リフシッツ、『場の古典論』、東京図書。
- 米谷民明、『相対性理論講義』、サイエンス社。
- 小林昭七、『接続の微分幾何とゲージ理論』、裳華房。
- JST、『光格子時計が時計の概念を変える』 (url : https://www.jst.go.jp/seika/bt57-58.html)。
- "Sixteenth Marcel Grossmann Meeting - MG16"(url : http://www.icra.it/mg/mg16/).